「ブレードランナー2049」を見た感想
「ブレードランナー2049」を見てきた。労働で疲労している時に見る映画ではなかったかもしれないが、なんとか乗り切った。良かった。
オタクが激褒めして一般にはあまりウケてないみたいな前評判を聞いていたがなるほどなと。全体として気怠いシーンもあり、変に話がややこしかったり、でもまあ前作もそんな感じだったよなという気がする(前作見たのが10年くらい前なのであまり覚えてない)。観客にも途中でいびきかいてる人いたしそういう感じ。
はい。
以下ネタバレ含む感想です。
・冒頭のカリフォルニアの合成農業シーンが良い。謎のセンターピボット式みたいな感じ。太陽光パネルっぽいのが円状に配置され、はじめ視聴者はそれがどういう絵なのか構造を把握できない。円状のマンションの廊下にも見えたり。そしてビニールハウスが埋め尽くす広大なカリフォルニアの大地の上を一台のプジョー製のスピナーが飛んでいく。これです。僕が見たかったのはこれ。という感情があり、冒頭からニンヤリしていた。(個人的に最近は雑然としたサイバーパンク的都市風景より郊外や田舎のだだっ広い人工空間が好きなので、それと合致した)
・ともかく雨。スピナーの窓ガラスを後方に流れていく水滴の跡。それです。
・泥臭いスーツ着た男が芋虫をモニョモニョし、鍋がカタコトしている
・眼球にバーコードスキャナ、骨に製造番号
・男女の真面目なシーンで背景に〇〇アパートのデカい文字があるの笑ってしまう
・ホログラム女性が上司からの着信で中断される(イーガンの万物理論の体内ソフトが勝手に彼女とのセックスを中断するやつを思い出した)
・退役したデッカードの同僚(前作で上司とかで出てましたっけ?)が折り紙の羊をポンッと。
・ウォレス社の内装が最高。エジプト風というか(まあタイレル社のピラミッド社屋からしてそういう趣味だが)光の波がウニョウニョしてたり、CEO部屋がなんか水場に中心にソファ。あと古文書館みたいなのがあるのが最高。モブが痩せたスキンヘッド。ナイロン袋っぽいのからズルっと落ちてくる新製品。ギリシャ彫像っぽいやつ、円柱ガラスに液浸されたタイレル社の初代レプリカントの標本(あと後半の核汚染地域のエジプト風の彫像、街中に出現するクソデカいホログラム裸体女性)。
そういうことですね。
・売春婦が主人公に向かって「Aボーイ」(アンドロイドボーイ)と声をかける。端末の音が鳴ると「生身の女に興味がないのね」そして「こいつブレードランナーじゃんマジやべえ」曇りガラスの売春宿(コンビニのようでもありオシャレなアパレルショップのようでもあり)
・警察署内でも人間に肩をぶつけられて小言を言われる主人公。
・核汚染地域。黄色い粉塵が覆われた都市。彫像。すべてが最高。廃クラブでのデッカードとの殴り合い。往年のスター歌手やダンサーのホログラムが流れ、音がグリッチノイズ?みたいに時々鳴っては途切れ、その中を二人のレプリカントがな。人間の夢の黄昏の中を二人の人造人間が殴り合うというそれがもう最高ですね。あと最終的にデッカード(レプリカント)が孤独を謳歌できるのが人間の来ないであろう?核汚染地域なの良いですね。まあ追う側も人間ではなくレプリカントですが。蜂はなんなんですかね(生殖をしない働きバチとレプリカントを重ねているみたいなことか?)
・ウイスキーを床にピシャッ。犬がペロペロ。「本物か」「聞いてみろ」
・都市外郭のダムのような海岸(弐瓶勉のメガロマニアを思い出しますね)。スピナーカーチェイス。海岸に不時着。そして殴り合い沈め合い。(なんかジョン・ヴァーリイの「スティール・ビーチ」に人間は進化したんじゃなく仕方なく機械の海岸に押し上げられただけだみたいな文章が出てくるらしく、僕は読んだことないがそれを思い出した)
・結局主人公は自分が何者かもわからず、しかしただ自分で選択し行動する。それはレプリカントの生殖の是非や反乱とも関わらないような何かなのだろう。何者か分からず、生き、そして死ぬ。
・しかしまあなんというか、アレな言い方をすれば二次元オタクが「自分だと思った?プギャー」と煽られる話である。
・でもまあ、出産に立ち会った旧型レプリカントが人間らしさが云々などと述べている時に、主人公とホログラム彼女は人でない者同士自分たちが何者であるにせよ互いに慰め合っていたわけで、そういうところのズレというか、両者には大きな隔たりがあるような気もする。
某氏がツイッターで上手く言っていたので引用しておきます。
今回のブレランの大仕掛けは、たぶん主人公はじつはPKD流のリアルと虚構の錯乱からもともとは自由だってことじゃないかな。全体としてたしかにブレランだしPKDなんだけど、監督はじつはそういう主題に対して批判的なのでは、と感じた。
— rigardo kaj silento (@regardetsilence) 2017年10月27日