秩序と進歩・人類教・世界統一ブーム
山下泰平のブログで以前にこの記事がバズっていた。
明治の終りに世界統一ブームがあったという話が出ている。
世界統一倶楽部ってイカれてるよなーって思うかもしれないけど、これも実はちょっとしたブームだった。世界発展倶楽部とか作ったりするような奴らもいた。
世界統一って八紘一宇なんじゃないのって思う人もいるかもしれないが、世界統一倶楽部のほうが先に成立していて、コムトの人類教やカントの『永遠平和のために』から発展して発生した思想である。
コムトというのはオーギュスト・コントのことで社会学の祖である。
コントによれば、学問は数学から始まり物理学→化学→生物学と発展した後に社会学で完結し、人間の社会は神学的→形而上学的→実証的段階と発展するとのこと。
全ての科学は事象を予見するためにあるのだから、社会学が完成した暁には社会がどう発展するかが予見できるようになる。その為には過去の社会と現在の社会の二点をきちんと精査することが必要で、その二点の延長線上に未来社会を予見することができる、みたいなことも言ってる。
まあ後の唯物史観とかに繋がっていきそうな話ですね。
コントはフランス革命やナポレオンがドカドカやっていた時代に生きていて、国王は専制をするからクソ、人民は批判しかせず全てを破壊してしまうからクソみたいなことを言っていて、じゃあどうすれば社会を再構成して秩序を与えることができるのかを真面目に考えていたらしい。
ともかく晩年近くになると人類教とかいうよく分からんものを打ち立てたりしている。
Wikipediaにも項目がある。短いので全文引用する。
人類教(じんるいきょう)とは哲学者であるオーギュスト・コントによって提供された宗教。これは愛を基本として、人類の幸福のために奉仕することこそが人道であり、人道というのが社会においての最高の表現であるとされた。
人類教においての主張というのは、現実において存在しているのは人類のみであるということであり、個人というものは抽象という形にされて退けられていた。そして個人というのは個体ということであり、個人が死んだとしても、それは固体が消滅するに過ぎないという概念であった。このことから人間の死後にも存在し続けるとされている霊魂というものは存在しないということでもあった。
何を言っているのかよく分からない。
ちなみに、現在のブラジルの国旗に書かれている「秩序と進歩」(Ordem e Progresso)という言葉はコントの言葉である。そして人類教の教会もブラジルにはまだあるらしい。
ブラジルは1889年を機に君主制から連邦共和制に移行して近代化の道を進んだらしいのだが、そのクーデターに加担した人々の中枢にコント実証主義の影響を受けた者がいたという。
以下のpdfにそうした内容がまとめられている。
http://www.js3la.jp/journal/pdf/ronshu27/ronshu027_01Mitsuhashi.pdf
ブラジルは近代化を進める際に旧宗主国であるスペインやポルトガルからは距離を置きたいと思っており、流行や文化面でフランスをお手本とする流れの中でコント実証主義が受け入れられるようになった。「文明と進歩」「共和主義と科学主義」といった感じでイケイケドンドンな感じでやっていく。
その中で「人類教」という概念はウケが悪かったものの、コント原理主義みたいな人々はブラジル実証主義者教会を立ち上げてガンガンやっていった。
話は冒頭に戻るが、世界統一のブームがあったというのはどうもそのようで、
明治末期か大正初期の頃にH.G.ウェルズの「空の戦争」が邦訳された時に結末部分が改変されて、世界政府が出来上がるという話が付け加えられているというエピソードを以前インターネットで読んだ気がする。
ウェルズ自身、第一次世界大戦の頃に世界政府や国際連盟の概念を小説に出しているようので、もしかしたらそういうのも含めて邦訳したのかもしれないが、よく分からん。
ともかく第一次世界大戦の時代(大正3年以降)になってくるとそういう流れは確実にあったのだろうと思う。
世界統一してえ~~。