読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「青い脂」的「のんのんびより」第二話冒頭

にゃんぱす。
のんのんびより」が大変良いアニメだったので、第二話の冒頭をウラジミール・ソローキン「青い脂」っぽく書きました。

 

――――――――――――――――――――

 やあ、お前(モン・プティ)。私の重くて大きいお友達、優しいごろつきくん。一条ホタルだ。両親のマイナス=ポジットな転勤によって田舎に転校してきた哀れな小学五年生。住む場所が変わり、学校も変わった。ここでは何もかもが旧態依然で、まるで五世紀か二十世紀にいるみたいだ。ここにはセンサー=ラジオすらない。全媒体(メディア)のプラス=ゲマインが禁じられている。すべての駄菓子屋には第三世代の超伝導体が使用されている。ということは? そうだ。野菜無人販売所(コンビニエンスストア)しか残っていないのだ。憂愁やらオボ=ロボやらで私がカッテージチーズにならないよう祈ってくれ。お前の星にキスする。
 学校についてもう少し詳しく説明しよう。教室の扉に掲げられたネームプレートにはこう書かれている。
「二年一組、プラス小一!プラス中一!プラス中三!プラス小五!」
 つまりこういうことだ。
 この学校の変わっていること:
(一)全校生徒はこれっぽっち。五人。リプス・老外(ラオワイ)。
(二)同じ教室に小学生と中学生がいる。
(三)学年はばらばら。授業は自習形式。その間に先生は鼻汁を垂らしながら四角い猫とのマルチセックスを活発に試金(ため)している。
 だからといって同情はしないでくれ。私のつれない蝶々くん。ちょうど私はこの時間を使って詩を書き終えたところだ。読んでやろう。

 魚になって御万光
 飛んでるように御万光
 あの山をひとつ越えたら御万光
 真っ直ぐに伸びた御万光
 誰かのちっちゃな御万光
 片っぽになった靴が示すのは御万光

 緩やかに続いてく
 日々は答えなどない

 季節が水を染めて
 ハイヤア!
 七色に光るよ
 ハイヤア!
 息つぎしたら消えた
 ハイヤア!

 絶え間なく降り注いでる
 ハイヤア!
 笑い声が遠くで
 ハイヤア!
 歌うように響いてる
 ハイヤア!

 ほらどうだ、リプス・你媽的(ニーマーダ)・大便(タービエン)。この詩は私の白い文件挟(ウエンジエンジア)(紙ばさみ)に入れておいてくれ。お前の脳たりん連中に見せるんじゃないぞ。押しつぶす。
 OK、トップ=ディレクト。お前に私以外の個体(オブジェクト)を紹介しよう。級友らと付き合うのは重い挽肉(ファールシュ)だ。
 小学一年生のレンゲ。
「終わった!!!我々は問題集を成し遂げたのだ。お前のアクティブな友を紹介してくれ」
 紫色の毛に覆われた肉の△から声が発せられる。十二時間にも及ぶ執筆(スクリプト)プロセスの後でレンゲの体は激しく変形していた。眼は異常なほど大きく開かれ、赤く硬化している。髪は興奮対象(エアレーゲン・オブジェクト)である二本の黄色いリボンによって二つに括られていた。腕をYの字に大きく振り上げている。
「リプス、この問題はキノコだ……キノコだ……マイナス=ディレクト
 中学一年生のナツミがぶつぶつとつぶやいている。ナツミはプロセスのためにかなり疲労困憊し、やややややややややっとのことで呼吸している。ナツミは鉛筆をことごとく噛み砕いてしまった。そのせいで顎は前に突き出し、頭から血を噴き出して髪を赤く染めている。完全にカッテージチーズだ。興奮対象(エアレーゲン・オブジェクト)は自由飛行の赤い発光球体。
 ナツミが後ろを振り返り、そのコマリに声をかける。
「リプス・貧乏的身長、この問題が、分かるか?……分かるなら、代わりに、やってくれないか?」
「オトレーピ、オトレーピ、ポロステーリ」
  コマリはナツミの姉で中学二年生。執筆プロセスはまだ続いている。その瞳孔は四角い猫のように薄くなり、ナツミをにらんでいる。興奮対象(エアレーゲン・オブジェクト)はホラーDVD。
 あと、中学三年生のスグル。ナツミとコマリの兄。執筆(スクリプト)プロセスの間、スグルはまったく変形しなかった。雨漏りのために床が抜けて、大量の出血があっただけだ。個体(オブジェクト)は微動だにせず、休み時間を迎えるだろう。興奮対象(エアレーゲン・オブジェクト)は不明だ。
 レンゲが私に振り返り、その卑猥な△から声を上げる。
「これは数学的記念碑だ。どうすればいいだろうか、のん?」
「リプス、提出したら昼休みだ」
「では、持っていこう。のん」
 そこからレンゲはのんのんと、ただのんのんとのんのんのんのんと這いずり這いずりのんのんとしながら教卓へと向かった。
 担任のミヤウチはレンゲの姉だ。あいつの四角い猫には<単眼巨神(キュクロープス)238MS>をお見舞いしてやりたい気分だ。リプス。照準器から四角い星がよく見える。
レンゲがミヤウチと話している。
「作戦書が完成した」
「霊験満意(リンイエンマンイー)だ」
「じゃーい」
 BIOS切断としばしの痙攣の後、レンゲは仮死状態に入った。

――――――――――――――――――――
以下用語解説を「青い脂」より引用。

リプス:
 二〇二八年のオクラホマにおける核災害の後、ユーロアジア人たちの会話に現れた国際的罵言。独断で放射線障害ゾーンに残り、二十五日にわたって放射線を浴びた死にゆく己の体の状態について詳細な実況放送を行った、USA海兵隊ジョナサン・リプスの苗字に由来する。

御万光:
 星を意味するズヴェズダー(ロシア語)が女性器の卑称であるビズダー(ロシア語)に置き換えられている。

 「青い脂」のあらすじ(amazonより)は以下。他人には胸を張って勧めるような本ではないですが、笑えるところは笑えました。

2068年、雪に埋もれた東シベリアの遺伝子研究所。トルストイ4号、ドストエフスキー2号、ナボコフ7号など、7体の文学クローンが作品を執筆したのち体内に蓄積される不思議な物質「青脂」。母なるロシアの大地と交合する謎の教団がタイムマシンでこの物質を送りこんだのは、スターリンヒトラーがヨーロッパを二分する1954年のモスクワだった。スターリン、フルシチョフ、ベリヤ、アフマートワ、マンデリシュターム、ブロツキー、ヒトラー、ヘス、ゲーリングリーフェンシュタール…。20世紀の巨頭たちが「青脂」をめぐって繰りひろげる大争奪戦。マルチセックス、拷問、ドラッグ、正体不明な造語が詰めこまれた奇想天外な物語は、やがてオーバーザルツベルクのヒトラーの牙城で究極の大団円を迎えることとなる。現代文学の怪物ソローキンの代表作、ついに翻訳刊行。


青い脂

青い脂

一条蛍はサイコー。